【猫のリンパ腫】血便をきっかけに消化管リンパ腫が見つかった症例
今回は、血便をきっかけに検査を行い、腸に腫瘍が見つかった猫ちゃんの症例をご紹介します。
その後、腫瘍からの出血によって貧血を起こしたため、輸血と手術を実施しました。摘出した腫瘍を病理検査した結果、「リンパ腫」と診断され、現在は化学療法(抗がん剤治療)を行っています。
症例
・スコティッシュフォールド
・12歳7か月
・去勢雄
・体重4.0kg
来院のきっかけは「血便」
数日前から便に血が混ざるようになったとのことで来院されました。
猫の血便は、大腸炎や感染症、食事の影響など、さまざまな原因でみられます。血便があるからといって、必ずしも腫瘍などの大きな病気があるわけではありません。
一方で、血便が続いている、繰り返している、食欲や元気が低下している、体重が減っているといった場合には、消化管の病気が隠れていないか詳しく調べることが大切です。
今回は原因を調べるため、血液検査と腹部超音波検査(エコー検査)を行いました。
超音波検査で腸に腫瘍を確認
腹部超音波検査では、胃や腸の壁の状態や厚み、周囲のリンパ節などを確認することができます。
今回の検査では、消化管に腫瘍が確認され、さらに腫瘍周囲のリンパ節にも腫れが認められました。これらの所見から、リンパ腫を含む腫瘍性疾患の可能性を考えました。
ただし、超音波検査で腫瘍の存在や広がりを確認できても、画像だけで腫瘍の種類まで確定できるとは限りません。そのため、腫瘍の種類を詳しく調べるための追加検査についてご説明しましたが、この日はご家族で相談していただくこととなり、一度ご自宅へ帰られました。
数日後、腫瘍からの出血により貧血状態に
数日後、再び来院された際には、腸の腫瘍から出血を起こし、貧血が進行していました。貧血が進むと、全身に十分な酸素を運ぶことができなくなり、元気がなくなる、動きたがらない、呼吸が速くなるなどの症状がみられることがあります。状態によっては緊急の対応が必要になります。
今回はまず輸血を行って全身状態を安定させたうえで、出血の原因となっている腸の腫瘍を摘出する手術を行いました。
腫瘍のある腸を切除し、「端々吻合」を実施
手術では、腫瘍ができている部分の腸管を切除しました。腸の一部を切除したあとは、残った腸管同士をつなぎ合わせる「端々吻合(たんたんふんごう)」を行います。これによって、食べたものが再び腸管を通過できるようにします。
※手術中の写真があります
また、摘出した腫瘍は病理組織検査へ提出しました。腫瘍は見た目や超音波検査だけでは種類を確定できないことがあるため、採取・摘出した組織を詳しく調べる「病理組織検査」が重要になります。腫瘍の種類を正確に診断することで、その後の治療方針を検討することができます。
病理検査の結果、「リンパ腫」と診断
病理組織検査の結果、摘出した腫瘍は「リンパ腫」と診断されました。リンパ腫とは、免疫に関わる「リンパ球」という細胞が腫瘍化する病気です。猫では、胃や腸などの消化管に発生する「消化管リンパ腫」もみられます。
消化管リンパ腫では、
・食欲が落ちる
・体重が減る
・嘔吐する
・下痢や軟便が続く
・便に血が混ざる
などの症状がみられることがあります。
ただし、これらはリンパ腫だけにみられる症状ではありません。診察や血液検査、超音波検査などを組み合わせ、必要に応じて細胞や組織を調べながら診断していきます。
手術後は化学療法を開始
今回の猫ちゃんでは、腸の腫瘍からの出血によって貧血が進行していたため、まず輸血と手術を行いました。その後、病理検査によってリンパ腫と診断されたため、手術後の体力の回復を待って化学療法(抗がん剤治療)を開始しています。
リンパ腫では、病型や状態に応じて化学療法が治療の中心となります。治療方法は、リンパ腫のタイプや発生している場所、病気の広がり、猫ちゃんの年齢や全身状態などによって異なるため、一頭一頭の状態に合わせて治療方針を検討していきます。
猫の血便が続くときは、早めにご相談ください
猫の血便にはさまざまな原因があり、一時的な腸炎などでみられることもあります。そのため、「血便=腫瘍」というわけではありません。
一方で、今回のように血便をきっかけに詳しく検査することで、消化管の腫瘍が見つかることもあります。
特に、
・血便が続いている、繰り返している
・食欲が落ちている
・嘔吐や下痢もみられる
・体重が減ってきた
・元気がない
といった変化がある場合には、早めに動物病院を受診することをおすすめします。
また、シニア期の猫では、食欲や体重、便の状態などに少しずつ変化が現れることがあります。「年齢のせいかな」と思うような小さな変化でも、病気のサインが隠れていることがありますので、変化が続く場合には一度ご相談ください。
当院では、診察や血液検査に加えて、必要に応じて腹部超音波検査などを行い、血便や嘔吐、下痢などの消化器症状の原因を詳しく調べています。
2026年09月05日 18:38